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群馬県における働き方改革と残業削減の取り組み

2024.10.02

「働き方改革」という言葉が日本のビジネス界で注目されるようになって久しいですが、実際にその内容や目的について理解している人はどれくらいいるでしょうか。労働時間の短縮や休暇の取得促進だけではなく、もっと広範な意味を持つものです。

目次

    働き方改革の背景

    その背景には、急速な少子高齢化による生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)の減少、長時間労働による健康被害の問題、持続的成長のための生産性向上などがあります。

    1. 長時間労働と健康問題

    日本では長時間労働が大きな社会問題となっており、過労死や健康被害が多く報告されています。 従業員の健康を守り、仕事と生活のバランスのためには、労働時間の見直しが必要とされており、政府は労働時間の上限規制や、労働環境の改善に目を向けています。

    2. 少子高齢化と労働力不足

    この問題に対処するためには、高齢者や女性、外国人労働者の活用が求められています。
    働き方改革は、多様な人々が働きやすい環境を整備することで、労働力の多様化を促進し、労働市場の活性化を図ることを目的としています。

    3. 生産性向上の必要性

    日本は国際的に見て労働生産性が低いとされています。これは、長時間働いても成果が伴わない労働習慣や、非効率な業務プロセスが原因とされています。持続的に成長し、市場での競争力を高めるために、働きやすい環境を維持しながら生産性向上を目指すことが求められています。

    働き方改革とは

    厚生労働省では、「働き方改革とは、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにするための改革」としていて、「働き方改革」を進めるための、働き方改革関連法の法改正を以下のように順次始めています。

    • 年次有給休暇の時季指定
    • 時間外労働の上限規制
    • 同一労働同一賃金

    このような全国的な流れの中で、群馬県もまた、県独自の視点から働き方改革と残業削減に努めております。この記事では、群馬県における働き方改革の現状と課題、具体的な取り組み事例について紹介します。

    群馬県における働き方改革

    群馬県は、関東地方に位置し、首都圏からのアクセスの良さや自然環境の豊かさで知られています。伝統産業から製造業まで、さまざまな産業が存在していますが、伝統的に長時間労働を容認する考え方が常態化しており、人口減少や少子高齢者化の影響も大きく、若年労働力不足が深刻化しています。

    特に、中小企業では、長時間労働問題や若年労働力の確保が難しいといった課題が顕在化しております。これらの問題に対して、働き方改革は重要な解決策とされています。また、大企業と比較して企業の規模が小さく、労働条件の改善や生産性向上が遅れがちな傾向にあることも働き方改革が求められる理由の一つです。

    群馬県においても9割以上を占める中小企業・小規模事業者への支援策等について、関係機関・関係団体と情報共有・意見交換を行うことにより、必要な取組を横断的に連携して実施しようとしています。 具体的な取り組みとしては、

    • イクボス
    • いきいきGカンパニー認証制度
    • 働き方改革アドバイザー認定
    • 働き方改革実践ガイド
    • 群馬働き方改革推進会議

    等が挙げられます。

    イクボス

    「イクボス」(職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果も出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職))を増やす取組を行っています。

    いきいきGカンパニー認証制度

    仕事と家庭の両立支援に加え、職場における女性の活躍推進や従業員の家庭教育等ワーク・ライフ・バランスの推進等に係る企業、団体の取組を応援する、「群馬県いきいきGカンパニー認証制度」を運営しています。

    働き方改革アドバイザー認定

    県内の企業や団体に働きやすい職場環境づくりについて助言、働きかけ行うための必要な知識を身につけた方を、「働き方改革アドバイザー」として県が認定しています。

    働き方改革実践ガイド

    主に中小企業・小規模事業者が「働き方改革」に取り組む際のきっかけとしていただけるよう、「群馬県働き方改革実践ガイド」を作成しました。

    群馬働き方改革推進会議

    労働施策総合推進法及び女性活躍推進法に基づく協議会等として、群馬労働局と共同で「群馬働き方改革推進会議」を設置し、県内における働き方改革の推進及び働く女性の活躍推進等に関する情報共有や意見交換を行います。

    働き方改革の成功事例

    1. 残業時間を積極的に削減する社員に賞与を上乗せ

    (情報通信・ソフトウエア開発/14名)

    取り組み前の状況

    社員とその家族のための職場の環境づくりが課題になっていた。

    取り組んだ内容

    賞与の支給時に、有給休暇の取得日数に2,000円を掛けた金額を、また、半年間の時間外労働が10時間以下の場合には25,000円を、それぞれ上乗せする等の賃金規程を策定。

    取り組みの結果

    10年前に比べて残業時間が5割減少。
    会社の利益率も向上し、社員のための働く環境づくりが企業経営のメリットにもつながっている。

    2. ジョブローテーションの導入で社員のスキルをアップ

    (清酒の製造/160名)

    取り組み前の状況

    若者の採用・育成を進めるための労働環境の整備が課題であった。

    取り組んだ内容

    社長や役職者の声かけで「5時過ぎたら帰るのが当然」を社内に浸透。
    ジョブローテーション(定期的な職場の異動や職務の変更)を導入し、一人ひとりのスキルアップと周囲の支援で業務効率化を推進。

    取り組みの結果

    残業時間を月平均1.4時間に抑え,年次有給休暇の取得率も60%に上昇。
    若者の採用・育成に積極的で労働環境がよいことを示す「ユースエール認定企業」の認定を取得。

    3. 変形労働時間制の導入で勤務時間にメリハリづけ

    (服飾品小売/300名) 

    取り組み前の状況

    社員の多数を占める女性従業員が意欲や能力を生かして活躍できる職場環境の整備が課題であった。

    取り組んだ内容

    店舗で1か月単位の変形労働時間制を採用し、店舗ごとに繁忙日の労働時間を長く、そうでない日の労働時間を短く設定するなどのメリハリ付け。
    エリアマネージャーが担当店舗の各従業員の労働時間を把握し、残業時間が長い傾向にある店舗の店長に対し、シフトの調整等をアドバイス。

    取り組みの結果

    変形労働時間制の導入等により、残業時間が前年同期から21.5%減少。

    働き方改革の課題と今後の展望

    1. 長時間労働文化の根強さ

    欧米に比べ日本の社会には、長時間労働が深く根付いてしまっています。「働くことは美徳」という価値観が強かったり、長く働くほど、残業代が稼げて給料が高くなったり人事評価で良い評価を得られたりするため、長時間労働が蔓延しています。
    この問題に対処するには、日本全体や企業の文化の変革が必要です。残業の削減、効率的な働き方の導入、そしてワーク・ライフ・バランスの重視等の多角的なアプローチが、健全な労働環境への鍵となるはずです。

    2. 生産性向上の難しさ

    働き方を改革しても、成果が伴わなければ意味がありません。生産性向上のためには、労働時間を減らすだけでなく、業務プロセスの改善やITの活用、スキルアップのための教育など、総合的な取り組みが求められます。

    残業削減の最近の取組み

    日本の労働環境は長時間労働で知られていますが、最近は働き方改革の影響もあり、企業内で「残業削減」が重要なテーマとなっています。このブログでは、残業を削減することの重要性、具体的なもの取り組み方法、およびその効果について詳しく見ていきましょう。

    残業を削減することの重要性

    1. 健康への影響

    長時間労働は、従業員の健康を著しく損なう可能性があります。心臓病、高血圧、うつ病など、様々な健康問題のリスクが存在します。健康を守るためにも、残業時間の削減は早急に解決すべき課題です。

    2. 生産性が低下する

    残業が常態化すると、疲労が蓄積し、従業員の生産性が低下します。 適切な労働時間管理により短時間で集中して働く環境を整えることで、従業員が短時間で効率よく業務を遂行できるようになり、長期的に見てより多くの成果を生むことができるようになります。

    3. ワーク・ライフ・バランス

    従業員が仕事とプライベート時間のバランスを適正に保つことが出来れば、仕事のモチベーションの向上や職場の雰囲気改善につながります。残業の削減は、ワーク・ライフ・バランスの改善に直結します。

    残業削減の具体的な内容

    残業時間を削減する具体例は、以下の通りです。

    • 退社時間までに業務を終わらせることを目標にする
    • 勤務時間内に終わる仕事量か確認する
    • 業務プロセスの見直し
    • 業務内容を共有する
    • 残業を事前申請する
    • ノー残業デーの実施
    • 自動化ツールを使用し業務を効率化する
    • 1人に集中した業務の改善をする
    • プロジェクト管理を徹底して負荷を分散する
    • 残業時間の見える化
    • 顧客を巻き込み効率化する

    残業削減の効果

    1. 従業員の健康と幸福感の向上

    従業員の健康と幸福感の向上は、企業の成長に欠かせない要素となっています。かつては「働きがい」や「モチベーション」が注目されていましたが、最近では従業員が心身ともに健康であり、仕事に対してポジティブな感情を持っていることが、企業の成功に直結すると考えられています。

    2. 生産性の向上

    短時間で集中して作業することで、従業員の生産性が向上します。労働時間と生産性は比例しないため、効率的な時間の使い方が重要です。

    3. 企業イメージの向上

    残業時間の削減を積極的に進めている企業は、社会から評価されています。これは、優秀な人材の確保や顧客の獲得につながります。

    残業削減対策実施の課題

    残業削減は、社員全員に必要性を理解させたうえで巻き込んで、全社的に取組まないとなかなかうまくいきません。以下のようなパターンにはまると、失敗する可能性が高くなります。

    • 強制的に残業なしの施策を推し進める
    • 残業時間削減の取り組みを社員が受け入れていない
    • 具体的な対策が取られていない

    焦って上記のような取組みをしてしまうと、社員の協力が得られなくなってしまい、良い結果は期待できません。

    企業における取組事例

    ケース1

    時間外労働削減の取組の背景・効果

    取引先からの注文量の増減により、業務の平準化が難しい中、残業を事前に申請したり、人事評価の項目に時間外労働を組み入れるなど、トップダウンで取組を推進し、時間外労働の削減に取り組んでいます。

    残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理

    従業員は、残業を行う場合、日々「自己申告表」により事前申請を行い、管理職に提出しています。
    従業員の労働時間の集計結果は、管理部門経由で、管理職が毎月社長に報告しています。この報告を基に、時間外労働が多い部門に対して、社長・管理部門から是正勧告を行い、対応策の報告を求めるなど、トップダウンで時間外労働削減に取り組んでいます。

    時間外労働削減の取組の効果

    残業の事前申請制度により、業務量、業務内容と労働時間の管理が徹底されるようになりました。従業員は、効率的に業務を行うという意識を持つようになり、その結果、労働時間の削減につながっています。
    また、長時間残業の際の伺い書提出や評価・報奨制度により、管理職は部下の時間管理に取り組む必要があることから、部下の指導を行い、安易に残業を行うことはなくなっています。

    ケース2

    時間外労働削減の取組の背景・効果

    生産数量の増減による繁閑や人材の確保が難しい場合があり、時間外労働が多くなっていましたが、社長及び工場長のトップダウンによる残業時間管理の強化、業務プロセスの見 直しを行い、時間外労働を半減させました。

    残業の事前申請制度の導入と実施状況の管理

    従業員は、残業を行う場合に、毎日「時間外労働申請書」を管理職に提出します。管理職は、残業内容を確認し、残業をしてでも実施する必要のある業務であるかどうかを判断して、不要と判断すれば、翌日に回すよう指導しています。
    管理職に対しては、申請書があがってきた機会を捉えて、部下の業務の内容や進捗状況を把握し、コミュニケーションを図るように指示しています。
    どの部門で、どのような理由により、どの程度の残業が発生しているかといった、残業の実態を管理部門が的確に把握できるようになりました。

    ケース3

    時間外労働削減の取組の背景・効果

    業務品質向上のため、ISO9001の認証を取得する中で、計画的・効率的に従業員教育を行っており、従業員の能力を適切に把握できるようになりました。また、時間外労働に関して労使で協議を行い、改善の方策を検討、実施することで時間外労働削減を実現しています。

    時間外労働削減の取組の内容

    1.時間外労働に関して労使で協議
    管理職会議を毎月実施しており、その際、時間外労働の実態や課題について話し合っています。毎週水曜日にノー残業デーを設定しています。

    2.計画的な従業員教育による能力向上
    キャリアパスをもとに、管理職と当人が相談して「教育訓練計画実施表」を半期ごとに作成し、今後の教育の計画(いつ、どの項目を教育するかという計画)を立案しています。
    従業員の能力を的確に把握し、効率よく教育ができるようになることで、無駄な時間を浪費することなく能力向上を図れて、結果として時間外労働の削減につながっています。

    まとめ

    残業削減は、従業員の健康と幸福、企業の生産性向上、そして良好なワーク・ライフ・バランスの確保に繋がります。そして、企業文化を改善し、従業員が満足して働ける環境を提供することで、持続可能な企業の成長を実現できます。働き方改革の中でも特に重要なこのテーマに、今後も多くの企業が真剣に取り組むことが大切です。

    上記の内容が社会保険労務士法人 伊勢崎経営労務で解決できます。
    働き方改革・残業代削減でお困りの中小企業の経営者様、個人事業主様、是非ご相談ください。

    執筆者:
    石原 慎二